WFPチャリティー エッセイコンテスト2024

入賞作品発表

審査員特別賞(中学生・高校生部門)

「当たり前」をありがとう。
神奈川県 川崎市立塚越中学校 3年
田中 ひよりさん

 給食。毎日班のみんなで机をくっつけ、楽しく食べる。それが「当たり前」。小学四年生だった頃の私は、本気でそんなことを考えていました。
 そんな私、もしかしたら私たちに、変化が訪れたのは二〇二〇年の冬。新型コロナウイルス感染症の流行でした。「また明日。」と別れた友達と、また会うことができたのは、約二か月後。楽しみだった、たくさんの行事は延期、そして中止。「楽しみ」は「不要不急」と言い換えられ、我慢を強いられる生活が続いていきました。
 そんな中迎えた、休み明け最初の給食。みんなで前を向き、会話はせず、一人で食べる。それが私たちの給食の、新しいルールとなっていました。
 しかし、給食の味は何一つ変わっていませんでした。麦ごはん、鮭の塩焼き、みそ汁、そして牛乳。ひとくちひとくちに、思い出と優しさがたくさん詰まっていたのです。
 これこそ慣れ親しんだあの味だと、友達と一緒に語り合うことは叶いませんでしたが、私は苦しい中でも前を向いていこうと思うことができました。給食が「いつもの日常」を、もう一度私たちに届けてくれたのです。
 中学生となった今、私たちは机をくっつけ笑い合いながら、給食を食べることができています。「これおいしい!」という話をみんなでしているとき、私は満腹感だけでない幸せを、どうしても感じてしまうのです。  
 これは「当たり前」なんかではない。「奇跡」だと、私はあのときの給食があったからこそ、想うことができています。この想いが、当時の私たち、そして今世界中で給食を楽しんでいる一人ひとりへの、メッセージとなると信じて。

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  • 【選者のコメント】
    広瀬 アリスさん(国連WFP協会親善大使・女優)
    作品を読ませていただき、私自身も普段は当たり前になりがちな「食」が決して当たり前ではないこと、また、大切に守っていかなければいけない味や想い、文化があるということを再認識することができました。
    今回は、環境が変わっても変わらない給食の味が思い出となり、前向きな今をつくってくれているというメッセージに感銘を受け、選ばせていただきました。
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