WFPチャリティー エッセイコンテスト2024

入賞作品発表

中学生・高校生部門賞

私の好きな時間
岡山県 津山工業高等専門学校 2年
谷村 結菜さん

 いつも朝起きて、台所に行くと、お弁当が一つだけ置いてある。毎朝、父が仕事に行く前に、私のためだけに、一つのお弁当のためだけに、早起きして作ってくれる。父は寮の朝ごはんを作る仕事をしているので、ただでさえ朝早く起きなければいけない。でも、私が高専生になってから、毎日欠かすことなく私のお弁当を作ってくれる。
 私は父が作ってくれるお弁当が大好きだ。お弁当箱の蓋を開けると、いつも美味しそうなものであふれている。私の父はあまり感謝や応援の言葉を口にはしない。母は「素直じゃないんだよ、ごめんね。」と言っている。でも、私は一年以上父の作るお弁当を食べているから気付いている。父は確かに言葉にはしないけど、テスト期間やスポーツ大会がある日など、私が頑張ろうとしている日や楽しみにしている日のお弁当には、私が小さいころからずっと好きな卵焼きや、私が前にお弁当に入っていて美味しいと言ったものが入っているのだ。お弁当には素直ではない父の気持ちも詰められている。そのお弁当を食べることで私は、嫌なことがあっても、大変なことがあっても、頑張ることができる。
 どんな時でもごはんを食べるということはとても大切なことだと思う。昼休みに仲のいい友達とお弁当を食べる時間が私は大好きだ。午前中に辛いことがあっても、友達と話してお弁当を食べていると、自然と笑顔になっているからだ。だから、そんな時間を作ってくれている父にはとても感謝をしている。
 以前、私が父に「お弁当ありがとう。美味しかったよ。」と伝えると、「結菜はちゃんと感謝を伝えられるからすごい。」と言ってくれたことがある。私はまだ父のようにお弁当に気持ちを詰めることはできないから、いつも私を元気にしてくれるお弁当のお礼を言葉で伝える。でもいつか、私もお父さんへの感謝をたくさん詰めたお弁当を作るから、待っていてね。

  • 【選者のコメント】
    本田 亮さん(国連WFP協会理事 クリエイティブディレクター・環境マンガ家)
    お母さんやおばあちゃんではなくお父さんと娘という関係が新鮮だった。言葉を交わさなくてもお弁当を作ることで心を通じ合える。お弁当が無口なお父さんと娘の心を繋いで、お弁当のおかげで困難や悩みを乗り越えられる。ごはんが取り持つ仲。ごはんって言葉に代わるメッセージなんですね。ごはんを通じた愛情の伝え方がよくわかる文章でした。
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