中山 蒼唯さん
2024年8月、ニュースでは台風が日本中に猛威をふるっていた。そんな頃、我が家にとって大事なことが起こった。母が熱で寝込んでしまったのである。父も海外出張であったため、姉と弟と3人交代で母の看病をした。夕方になり、私と姉で夕飯の支度をしようとした時、お米が残りわずかである事に気づいた。私達は雨風強い中、近所のスーパーにお米を買いに走った。いつもお米がおかれている場所へ向かうと、そこには一つもお米がない状態だった。夏の猛暑で米不足が深刻化していたのである。ニュースでは耳にしていたが、リアルにその状況を目の当たりにした。他のスーパーも同じ状況だった。翌朝、私はお米を買うためにお店の開店前から並んだ。他の人達も同じ考えで、かなりの列をなしていた。開店と同時にお米はあっという間になくなり、ギリギリお米を買う事ができた。帰って母へ大好きなオムライスを作ってあげた。ケチャップで「早く元気になってね」とメッセージ入りで。母は、ちょっぴり涙をうかべながら「とっても美味しいよ。子供達のごはんは百倍力だね」とうれしそうに食べてくれた。3日後には母の笑顔が戻ってきた。子供達で協力して乗りこえた出来事だった。お米が母の笑顔を取り戻してくれたのだ。
この話を熊本に住む祖父へ電話をした。すると、祖父が電話口で米節という歌を歌ってくれた。その歌はこうだ。「米という字を分析すればヨー、八十八の手がかかる。お米一粒粗末にゃならぬ。米は我らの親じゃもの。」いつもならおじいちゃんがまたみんようを歌っていると思うところだが、今回はやけに心にしみた。お米ができるまでには、八十八の苦労があるんだよと教えてくれた。
嵐と共にすぎ去った今年の夏の出来事は、農家の方への感謝の気持ちと家族の絆を思い出させてくれた。
「お米さん、本当にありがとう。」
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三浦 豪太さん(国連WFP協会顧問 プロスキーヤー・博士(医学))
作者は台風、母の病気、父の出張、米不足といった4難を抱えることによって危機的な状況になりました。その中で苦労して手に入れたお米、それを使って母を思い作った料理に一つのドラマを見た気持ちになりました。
このエッセイはそれだけではなく、祖父が米にまつわる古くからの民謡を歌うことによって、農家の努力と支えのおかげで今の豊かな日本が成り立っていることを問いかける素晴らしいエッセイでした。