「カレー、とってもおいしいね。」
そう言った私たちは笑って、泣いていました。
今年の三月に私たち家族はホストファミリーとして、チェコ共和国からの十七歳の留学生を受け入れました。はじめは、お互いに何を話せば良いかわかりませんでした。お互い距離を縮めたくても、文化も生活習慣も異なり、共通の趣味も見つかりませんでした。そんなある日、母に「カレーを二人で作ってくれない?」と頼まれました。早速、材料を一緒に買いに行き、私と留学生は、レシピを見ながらカレーライスを作りました。留学生がまずカレーをよそって、その上にご飯を載せました。それを見て、私と家族は笑い、留学生も大笑いしました。笑顔が溢れました。そして、完成して食べたカレーは、今まで食べた中で一番美味しく、格別でした。一緒に作ったことで、ごはんが私達を繋いでくれる、最高の共通言語だということに気づきました。それからは、一緒に鯛焼きを食べたり、チェコの料理を教えてもらいながら一緒に作ったり、母の作ったお弁当を一緒に食べたり、ごはんを通じて私達の思い出は毎日増えていきました。どの思い出も、美味しく、幸せな宝物です。
しかし、日本に来てから四ヶ月、彼女の病気が原因で、早期帰国が決定してしまいました。私はその事実に戸惑い、涙が溢れました。母も妹たちも留学生も泣いていました。みんなで泣きながら、カレーを作りました。
最後まで、ごはんは私たちの真ん中にありました。今でも留学生は、カレーや餃子など、私たちの思い出の味をチェコで作り、写真を送ってくれます。ごはんは私達の絆が深まるきっかけをくれました。英語や音楽のように、ごはんも世界の共通言語だと私は確信しています。
私が悲しかった時、困った時、ごはんが私たちに与えてくれる力を思い出します。なぜならごはんという言語は、人と人を繋げ、笑顔の思い出を作り、美味しく優しい未来をつくっていくから。
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三國 清三さん(国連WFP協会顧問 オテル・ドゥ・ミクニ オーナーシェフ)
僕が海外へ行ったのは20歳の時で、言葉はまったくわからなかった。僕はサッカーをしていたが、サッカーはアイコンタクトで言葉はほとんど要らない。そしてすぐに友達ができました。料理も言葉は要らず、見よう見まねで作れます。カレーという世界共通の食べ物が良かったのだと思います。食べ物は人類の共通語です。音楽や芸術のように、食もその力を持っています。食に携わっている僕としては、結乃愛さんが食の世界を理解してくれていて、とても感動しました。