私にはお弁当にいい思い出がある。私が中学2年生のころの話だ。私は、ある理由で仲が良かった友達とケンカをしてしまい、それがクラス中に広がって、悪いウワサを立てられてしまった。それがきっかけで学校にも行けなくなった。実は私の家は母子家庭で、母が朝早くから仕事に行くので、母には学校のことは言わず、いつも内緒で学校を休んでいた。だから母は、私が学校を休んでいるとも知らず、毎朝お弁当を作ってくれていた。「今日もしっかりお昼食べて、頑張ってね」と。そのお弁当を見るたび、胸がすごく痛んだのを今でもはっきり覚えている。だが、ある日、気持ちがものすごく辛くなって、このままではダメだと思い、母に全てを話すことを決心した。話すまでに時間がすごくかかった。自分が皆から嫌われているなんて言いたくなかった。恥ずかしい気持ちでいっぱいだった。だけど母は私の話を最後まで聞いて、そして抱きしめてくれた。話をした次の日、私は学校に行くことにした。そしてお昼の時間、いつものようにお弁当を開けると、一枚のメモが入っていた。そこには、“ママはいつでも味方だよ。今日は花鈴の好きなハンバーグを入れたよ”と書いてあった。私は涙が止まらなかった。こんなにも胸が熱くなったのは初めてな気がした。私は泣きながらお弁当を食べた。こんなにもおいしかったんだと感動した。今までで一番おいしいお弁当だった。あの時の母が作ってくれたお弁当とメモは私の背中をおしてくれた気がした。今でも辛いことがあればこの時のことを思い出している。母の力はやっぱりすごいんだと思った。
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湯川 れい子さん(国連WFP協会顧問 音楽評論家・作詞家)
お母さんの力。それはお母さんの愛です。どんなに忙しくても、毎朝お弁当を作ってくれるお母さん。今回頂いたエッセイの中にも、そんなお母さんの尊い姿は沢山ありました。
でも、学校に行けず、黙ってお弁当だけを食べて欠席を続けていた娘が、ついにたまらずにお母さんに告白した時、ただ黙って娘を抱きしめてくれたお母さん。「黙って抱きしめる」。一番むずかしい、一番素晴らしい、見習いたいお母さんの愛の姿に感動しました。