WFPチャリティー エッセイコンテスト2019

入賞作品発表

小学生部門賞

私の最強とっておきごはん
大阪府 関西大学初等部 4年
 森脇 茉菜(もりわき まな)さん

 九年と十ヶ月の私の人生の中で、大きな節目といえば、あれしかない。
 そう、それは、左耳が突然聞こえにくくなり、難聴と診断された小学三年生の六月だ。
 私にとっての大きな節目は、入園式や入学式、初めての運動会や文化祭などといった心がはずむような楽しいものではなく、恐怖や不安という心がしずむような出来事だった。
 そんな心がしずんだ大きな節目の時、母は私に、にぎりこぶし二個分くらいの大きな塩おにぎりを作ってくれた。
 目の前にその大きな塩おにぎりが二つ、妹と母の前にはそれぞれ一つずつお皿にドスンとのっかっていた。私はなぜ大きな塩おにぎりなんだろうとふしぎに思っていたら、
「さあ、千ひろ(千と千ひろの神かくしに出てくる千ひろのこと)みたいに、おにぎりをほおばってみ。」
 母の突然の言葉に、意味がわからずぼうぜんとしていると、妹がうそ泣きをしながら両手におにぎりをにぎりしめて食べ始めた。
 あ!はくが元気になるように作ったおにぎりを、千ひろが泣きながら食べていたあの場面を思い出した。私もすぐに同じようにまねをして食べてみた。
 たまらなくおいしかった。気がつくと、私の目から大つぶのなみだがあふれだし、本当に私は泣いていて、すると母も妹も泣いていた。その様子を見ていたら、なんだかおかしくなってきて、今度は三人で笑い転げた。
 私に元気になるように心を込めて作ってくれた母の塩おにぎり。心がぽかぽか温かくなって、うれしい気持ちが心を満たして、私のしずんだ心は、羽が生えたみたいに軽くなった。
 母の愛情たっぷりの特大塩おにぎりは、私の心を救ってくれた最強のとっておきごはんになった。

  • 【選者のコメント】
    三浦 豪太さん(国連WFP協会顧問 プロスキーヤー・博士(医学))
    小学校3年生の時、若くして難聴になった作者の暗い気持ちを救ってくれたのが母が作った塩おにぎりだった。それまで鬱屈していた気持ちをおにぎり一つで変えてしまった様子を見事に描いていた。
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