いつになったらお腹いっぱい食べることができるのか?私はそのことだけを考えていた。阪神大震災の後、私は毎日お腹を空かしていた。毎日ロールパンとカップ麺。学校にも行けず、スーパーに食料を買うために家族で行き、水をもらうために長い行列に並んだ。
しばらくすると学校が再開された。私は給食を期待していた。しかし担任の先生は出欠を取るとすぐに家に帰るように言った。「家の人のお手伝いをするのよ。また明日学校に来て先生に顔だけ見せてね。」先生にそう言われ、みんな帰っていった。数日すると牛乳が出された。「これを飲んだらすぐに家に帰りなさい」担任にそう言われ、牛乳を青空の下で一気に飲んだ。家に帰り、牛乳を飲んだことを母には内緒にした。自分だけがいい思いをしているようで申し訳なかった。その次の日にはコッペパンが配られた。「家に持って帰っていいですか?」と、どこからか聞こえた。先生が頷いた。その日はみんな一目散に家に帰っていった。私もパンを握りしめて走って帰った。母に手渡すと「良かったね。一人で食べていいのよ。」と言った。しかし私は「わけっこして」と言い、母に5等分してもらった。大きくはないコッペパンが5個に分けられ、それを家族5人で食べた。みんな美味しそうに食べてくれた。小さくなったパンはとてもおいしかった。お腹がいっぱいになるわけではなかったが、家族で分け合って食べる喜びを知った。
お腹がいっぱいになることは幸せだ。しかし一緒に分け合って食べる人がいるということはもっと幸せなことだ。一緒にご飯を食べる人がいて満腹まで食べられる今、これ以上の幸せはない。
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鈴木 邦夫(国連WFP協会事務局長)
WFPが支援をしている途上国の学校給食の現場では、子どもたちが給食として出されたビスケットを半分しか食べず、残りを家でお腹をすかしている幼い弟妹のために持って帰るという話をよく聞きます。食を通して人を思う気持ちも育てられる、極限の状態であればあるだけ、その思いも強く、忘れられない思い出になるのでしょう。そっと頷いた先生もその事をよくご存じだったのでしょう。優しさに満ち溢れたお話、ありがとうございました。