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WFPエッセイコンテスト2015に多数のご応募をいただき、誠にありがとうございました。
全国から15,841通の作品が寄せられ、厳正な審査の結果、入賞作品が決定しました。なお本コンテストでは、応募1作品につき給食約3日分(90円)が3社の協力企業よりそれぞれ寄付され、寄付金額は1,425,690円(1社あたり475,230円)となり、およそ47,523人の子どもたちに栄養価の高い給食を届けることができます。皆様のご支援に感謝いたします。是非、入賞作品をご覧ください。
女の子が私にピーナツの入ったクッキーを差し出した。少し汚れて湿ったポケットから両手でこっそり渡そうとしてきた。私は昨年カンボジアの孤児院を訪れた。そこで一番なついてくれた女の子だった。私は迷った。実はピーナツが苦手だ。それにこのクッキーはいつの物なのかわからない。拾った可能性もある。しかし純粋な目でまっすぐに見つめられると受け取らない訳にはいかなかった。気持ちだけ受け取って自分のポケットにしまっておこうと、手をのばした。女の子は口に入れろとジェスチャーで伝えてきた。もうだめだ、ピーナツが苦手とか言える状況ではない。だいたい言葉も通じないのだ。私は思いきってクッキーを口にいれてみた。それは甘くなくしょっぱい味だった。クッキーではなかったかもしれない。女の子はとても楽しそうに笑って、前の日に私が渡した折り鶴を取り出して見せた。そうか、お礼だったのかと私は初めて気がついた。
カンボジアにはホームレスチルドレンと呼ばれる、家も親もない子供が何万人もいる。孤児院の食事も大変質素で十分ではなかった。それでも毎日食べられるだけで幸せなのだと聞いた。ここの子供達にとって食べ物は貴重だ。どんな物も残さず食べる。お菓子はなおさら大事なものだと思う。この女の子にとって最大級のThank youを私は受け取ったのだ。半分ずつ食べれば良かったかな、と少し後悔した。
普段の週末、私はコンビニでアルバイトをしている。時間が来ると沢山の食品を処分しなければならない。安全な食べ物を提供するために必要なことはよくわかっている。しかし、まだ食べられる沢山の食品を袋に入れる度、私はあの大事なクッキーをくれた女の子の顔を思い出す。私にとって特別な味のクッキーだった。
湯川れい子さん(国連WFP協会顧問/音楽評論家・作詞家)
少し汚れて湿ったポケットから、カンボジアの女の子がおずおずと差し出してくれたクッキー。貰った日本人の高校生は、口に入れるのをさぞかしためらった事だろう。
その情景を想像するだけで、日本の無意識に過ごしている贅沢な日常が見えて来る。まだ充分に食べられる食品を捨てているコンビニでアルバイトしているという、筆者の見事な文章が胸を打った。この日本の無駄な消費を、今からでも何とか出来ないものだろうか。
本田亮さん(国連WFP協会理事 クリエイティブディレクター・環境マンガ家)
日常の食事がテーマとなっている作文が多い中でこの作品はちょっと違っていた。普通の生活では体験することのない断食という出来事から感じたことを、実に素直に冷静に分析している。
断食で起こる体の変化、心の葛藤などの表現は、小学生とは思えない文章力だ。
読んでいるうちにまるで断食をしたかのような気分になってしまい、僕もあらためて食べ物の大切さを実感してしまいました。
本当に「ありがとう」と言いたい作品です。
三國清三さん(国連WFP協会顧問 オテル・ドゥ・ミクニ オーナーシェフ)
僕も海外での生活が長かったが、最初に生活したスイスでは、自分が一生懸命働くと彼らは「ここでの生活は君の家と思って好きなようにしなよ」と、何度も言われたことを思い出した。日本人には理解できないグローバルな世界観があった。まさしく自分が上とも下とも思っておらず、本当の意味でのホスピタリティを身につけている。そのことを海外で実際に自分より貧しい人たちから教えられたことは、彼の人生の宝になるでしょう。
御立尚資さん(国連WFP協会理事 株式会社ボストン コンサルティング グループ 日本代表)
国を代表するアスリートでも、満足な食事をとることができず、ごみ箱に残された食べ残しを欲しがる。この衝撃的な事実を目の当たりにした筆者は、その経験を心に留めつづけ、地球上から飢餓と貧困が少しでも減ることを祈ってくださっている。
新興国経済が成長を果たし、絶対的貧困にあえぐ層は減ってきたかに見える。しかし、紛争、災害、干ばつなど、世界を揺るがすさまざまな事件は、その度に飢餓と貧困に苦しむ人たちを生み、また一見豊かに見える国々でも、さまざまな理由で、貧しさに苦しみ、十分に食事をとることもできない人たちが存在する。
このエッセイは、読者に対して、世界の現実から目をそむけず、自分ができる範囲でなんらかの行動を起こさなければ、という気持ちを起こさせてくれます。 ありがとうございました。
さかなクンさん
(東京海洋大学名誉博士)
作品を拝読して心がジーンとしました。そして自分も大好きな祖父のことを思い出しました。祖父は数年前に倒れ入院しました。忘れられないのが、もう何も食べられないのにゆっくり目を閉じて、お口をモグモグしているのです。せつなくなりました。そして“食べられる喜び”を、あらためて感謝する気持ちが大きくなりました。
これからも、1食1食をかみしめて「忘れられない幸せなごはん」として心に刻んでいきたいでギョざいます。
竹下景子さん
(国連WFP協会親善大使 俳優)
異色の作品。それだけに深く刺さりました。「家族団らん」と言えば一家での和やかな食事時を想像しますね。でも、岩﨑君にとっては団らんの場であるはずの夕食が、ご家族との精神的訣別をもたらしました。中学生には重すぎる現実です。しかし、それでも岩﨑君は自分の意志を貫きました。その勇気と決断力に拍手を送ります。これからも自分の信じる道を歩んでください。そして願わくば、その道すがら心許せる友と美味しいごはんを食べてほしいと祈っています。
小学生部門
神奈川県 横浜市立丸山台小学校 6年 上野 瑞季(うえの みずき)さん宮城県 仙台市立西多賀小学校 6年 工藤 渓太(くどう けいた)さん
東京都 足立区立梅島小学校 6年 中川 美生(なかがわ みお)さん
神奈川県 カリタス小学校 5年 藤澤 紗菜(ふじさわ さな)さん
東京都 足立区立梅島小学校 6年 山下 美穂(やました みほ)さん
中学生・高校生部門
神奈川県 慶應義塾湘南藤沢高等部 3年 足立 茉由香(あだち まゆか)さん沖縄県 沖縄県立向陽高等学校 3年 大城 沙織(おおしろ さおり)さん
奈良県 天理高等学校 2年 木下 こころ(きのした こころ)さん
兵庫県 クラーク記念国際高等学校芦屋キャンパス 3年 甲田 千香子(こうだ ちかこ)さん
埼玉県 立教新座高等学校 1年 土屋 翔(つちや しょう)さん
18歳以上部門
北海道 稲荷 正明(いなり まさあき)さん長野県 植松 裕香子(うえまつ ゆかこ)さん
愛媛県 栄 直美(さかえ なおみ)さん
静岡県 西原 強(にしはら つよし)さん
宮城県 樋口 裕子(ひぐち ゆうこ)さん
審査委員長の湯川れい子さんを中心に審査