WFPエッセイコンテスト2013 入賞作品

審査員特別賞(中学生・高校生部門) 「お弁当の思い出」
東京都 東京都立足立高等学校 1年 大塚 魁(おおつか かい)さん
 その日、私は母と喧嘩した。朝早くから起こされて腹が立ったという、自分勝手な青年の都合が原因だ。私は母が作ったお弁当を意図的に受け取らず学校へ向かった。

 私の家族は妹3人、父、母の計六人で生活を共にしている。母は私が冷凍食品が苦手なのを知っており、毎日朝早く起きて手作りで私と父の弁当を作っている。母は病弱であまり動けない身体なのに、毎日どのような想いで弁当を作っていただろうか。

 私はその日の昼、普段と同じ時間に授業が終わり、昼食を食べようと当たり前のようにカバンに手をかけた。弁当がない。そう思いすぐ今朝のやりとりを思い出し後悔した。その日は購買部の菓子パンを3つほど購入し、急いで食べたが、いつもの満腹感は得られなかった。

 学校が終わり、友達と遊んで帰るという日課を今日も過ごし、まだ明るい夕焼けの空を見上げながらゆっくりと帰った。家に着いた頃には辺りはぼんやり暗くなっていて、隣の家からはカレーの美味しそうな匂いが漂い、私は早く夕食を食べようと家の中に入った。誕生日おめでとう!という家族の温かい声で歓迎された。私は戸惑ったがすぐ状況を理解した。朝の出来事と罪悪感ですっかり自分の誕生日を忘れていたが、息子の誕生日を祝うことで頭いっぱいの母は朝の出来事さえ忘れていた。母がこの日のために出前で寿司をとっていたが、私はその横にある今朝の弁当に手を伸ばし小声で言った。自分勝手でごめん。いつもありがとう。お米が少し硬かったが私はいつもの満腹感に満足し、自分の行動を改めて見直すことができた、良い誕生日となった。