WFPエッセイコンテスト2012 入賞作品

審査員特別賞(中学生・高校生部門) 「東北魂」
宮城県 大崎市立古川西中学校 3年 高橋 慶吾(たかはし けいご)さん
 争いが起きている国の風景も、こんな感じなんだろうか。
「何もないし、何も変わってないや。」
一年半経っても気仙沼の景色は、あのすぐあとに見たのと何らかわりなかった。

 その店には二年ぶりくらいで行った。以前よりも西側の場所に移転している。前に使われていた豪華な食器は、真っ白い器になっていた。出された食事は、旬の魚を中心にした寿司。味は前とかわらず鼻をならしたくなるようなおいしさだ。でも一難去ってまた一難。今の東北の産物は、放射能の影響で流通が少し滞っているらしい。実際、私だって「おいしい、おいしい」と食べているけれど、「本当に大丈夫なのかな。」って思いは、頭の中をかけ巡る。でも、昔からわさびのきつい寿司を握る大将の寿司だから、涙が目ににじんででも食べたくなる。
「この建物、自宅だったんだけど、ここも浸水してさ。でもあっちの店は全部なくなっちゃったから。ここからまたふんばらないと。」

漁師さんが命懸けで漁に出る。捕れた新鮮な魚を職人さんが心を込めて調理する。消費者は信頼を寄せて、その作品をありがたく頂戴する。あたり前の生活をあたり前に取り戻さなくてはいけない。昔見た難民の子供達は茶色の水を飲んでいた。いつも不思議だった。でも今なら少しわかるような気がする。それしかないから、それを口にする。あとは「何か変だぞ。」と感じた人が、困っている人の支えになるしかないのだ。

私たち若い者は、今はここにあるものを食べて、将来を支えていく身体を作っていく。ごく普通の行いだけれど、「こわさ」は抱えながら生きていく。本当なら「食べること」は喜びとか希望につながることなのだろうけれど、心配もごちゃ混ぜになってついてくる。季節の食べ物を、何も考えず食べられる日々が早くやってきますように。これ以上、食生活が悪化することがありませんように。