WFPエッセイコンテスト2012 入賞作品

中学生・高校生部門賞 「始まりは心」
東京都 聖心女子学院 高等科1年 渋沢 早弥(しぶさわ さや)さん
 多くの日本人に今、足りない心。それは、毎日の食事を隣人や家族と共に感謝して頂く心。個食化や孤食化が進む、飽食大国の日本に欠けつつあるものだと思う。この心を持つ事は、私達が飢えに苦しむ人を救う第一歩だ、と私は考えた。しかし、初めは私が例え何かの募金をしても、飢えに苦しむ人を救える数は、たかが知れているとさえ思っていた。皆さんはどう考えているだろうか。その思いは、今年の夏の経験で百八十度変わったものとなったのである。

 飢餓のことは知っていたが、それはただの知識の一つに過ぎなかった。毎日、三食を十分に食べることができ、お腹が空けば間食を食べられるという幸せな生活に麻痺していたからである。

 しかし、今年の夏、日本模擬国連大会の参加への挑戦がきっかけとなり、食糧問題について調査した。WFPやFAOの日本事務所の方のお話を伺い、気候変動による食糧価格の高騰、爆発的人口増加で飢餓人口はさらに増えるかもしれない、という世界の食糧問題事情を知った。しかし、私を驚かせたのは、飢餓や貧困地域で行われている学校給食プログラムである。一つの給食、それも一つの小さいカップから始まり、目標地点はなんと飢餓の撲滅!その大きな大きな目標が、とてもとても小さなことから始まる積み重ねだと知った時は多大な衝撃、感銘を受けた。しかし、同時に身近にも感じた。

 人を救うには人の助けが必要で、お金だけではいけない。地道な取り組みであるから、一気に沢山の人々を救うことは出来ないと思う。しかし、そんなことは言っていられない。とにかく、一人でも生き延びられるようにすることが大切。人一人を救うだけで充分素晴らしいことだ。最初の自分を思い出し、同じ人間として、何とも無責任な自分を恥じた。そこで、まず、私達が大切にしなければいけないことが、最初に述べた心である。初心に帰り、日々の食事に感謝することから始めよう。私達にも救える人がまだまだ沢山いる。